読書

大事なことは「価値」に気づく能力。

前回の『自分のアタマで考えよう』に続き、ちきりんさんの著書『マーケット感覚を身につけよう 「これから何が売れるのか?」わかる人になる5つの方法』をご紹介します。

本書ではマーケット感覚とは「売れるものに気がつく能力」であり、「価値を認識する能力」のこと。この能力を「マーケット感覚」と著者は命名しています。

多くの人が求める「これからの社会で求められるのは、どんな能力なのか?」という問いへの答えが「マーケット感覚」だと著者は言います。

マーケット感覚があれば、
・身の回りにある潜在的な価値に気づける
・これから需要が大きくなりそうなモノが見える
・キャリア形成に役立つ
・マーケット(市場)で取引される価値は何なのかを理解できる

など、今まで見えていなかったことに気づけるようになります。マーケット感覚がどんなものか、具体的で分かりやすい例を用いて解説しています。

ビジネスマンはもちろんですが、学生、主婦(夫)、独立を考えている人、婚活をしている人にも役立ちそうな内容ですね。

線引いたところ

自分のすぐそばに「価値あるもの」が存在していても、その価値を認識する力がないと、「自分の周りには何も価値あるものがない」と思えてしまいます。

どんな分野であれ10年も働いたら、「自分に売れるものなど何もない」なんてことはありえません。もしそう感じるのだとしたら、その人に足りないのは「価値ある能力」ではなく、「価値ある能力に気づく能力」です。

社会の変化の背景や、時代が求める価値の変遷を理解し、新たに求められる価値を他社に先駆けて投入していく能力は、後天的に学んで身につけるべきマーケット感覚であって、生まれつきのファッションセンスなどではないのです。

私達日本人が覚悟を決めなければならないのは、「これからの社会は、どんどん市場化していく。それを避けることは、もはや不可能だ」ということなのです。

市場化が進む社会で高く売れるのは、「よい商品」ではなく、「需要に比べて供給が少ない商品」なのです。

市場化の進む社会におけるキャリア形成では、市場の動向をいち早く見極めるためのマーケット感覚と、需給バランスの変化に合わせて自分のスキルや専門性をシフトするための柔軟性や決断力が、何より重要になるのです。

重要なのはノウハウや知識を覚えることではなく、過去に経験のない場面に遭遇したときにも、自分で判断できる独自の基準や肌感覚を持つことです。

重要なのは儲かるかどうかではなく、「価値があるかどうか」なのです。

現時点で職業名が付いていなくても、「それを価値と感じる人」が現れれば、新しい市場が生まれるのです。

これから重要になるのは、「自分は何を売っているのか」「何を買っているのか」について、意識的になることです。

世の中で最も多いのは「普通の人」であり、一番大きな市場は「普通の人をターゲットにした市場」です。だから、自分が「普通であること」の価値を、過小評価する必要はまったくないのです。

どうすればマーケット感覚を身につけられるのか

マーケット感覚が重要なことは分かりました。ではどうやってその感覚を身につけられるのでしょうか。本書の第5章で5つ紹介しています。特に気になったのはこの2つ。

プライシング能力を身につける

近所のスーパーや雑貨屋、飲食店などに行って、すでに値札がついている商品について「自分だったらいくらで買うだろうか?」と自分なりにプライシング(値段をつける)してみましょう。

自分独自の基準を持ってプライシングすることが大切です。

例えば、映画館は大人1,900円です。これは高いか、安いか、それとも妥当か。ちょっと考えてみました。ぼくは映画は1,000円が妥当だと思ってるので高いと感じてます。ふかふかのソファに座って大画面で迫力ある音響で映像を観れる体験が映画館の価値です。あとはスマフォも見れないし静かにしないといけないので最後まで集中して作品を観れることとか。

ぼくは映画館も映画も大好きなのですが、良い音と大画面で観たいと思う映画はどうしても限られてしまうんですよね。アクションとかファンタジーとか。ドキュメンタリーや恋愛、ヒューマン系は家のテレビで十分楽しめるので、1,900円払って映画館で観ることはめったにありません。

でももし1,000円だったらジャンル関係なしに観に行きたいです。ぼくにとってはこの価格が映画館の価値です。6月から2,000円に上がりますが、自分の価値基準に合いそうな映画を見つけたらたとえ値上がりしても観に行きます。

すでに価格が決まっている商品・サービスについて自分なりに「この商品・サービスは自分だったらいくらなら買うか」ということをいつも意識してプライシングしていくことでマーケット感覚を養うことができます。

マーケット感覚を身につければ、値札がなくても価値あるものは自分で評価・判断できるようになります。自分で作った商品に値付けするときも役立ちますね。

今までは気づかなかったごく身近に転がっている大きな価値の源に気づくこともできるでしょう。

インセンティブシステムを理解する

人がなにか特定の言動をとったとき、何が要因でそんな言動をしたのか考える癖をつけましょう。

インセンティブシステムとは、目の前にある欲しい物を手に入れるために動くという、動機から言動に至る仕組みのことです。人参を目の前に吊り下げられた馬はそれを食べたいために走り続ける、みたいなこと。

最近ぼくの友人が10万円もする腕時計を買ったのですが、特に理由は聞きませんでした。単純にかっこよくて買ったのかなと思いましたが、そんな理由ではなく別のインセンティブシステムが働いたのかもしれません。

ずっと憧れていたとか、モテたいからとか、店員さんの営業がうまかったとか、自分を変えるきっかけにしたかったとか、時計を買った代わりになにかを買ってもらったとか、も考えられますね。今度聞いてみよう。

それと、自分の欲望にも素直になることも大切です。欲しいと思ったものをどうして欲しいと思ったのかをしっかりと考えることです。そこにどんなインセンティブが働いたのか。自分の心を分析できなければ、他人の心理を考えることも難しいですよね。

人間が動く理由や仕組みについて日々ほんのちょっとでも深く考える癖をつけること。そうすれば市場の動き方についても、少しずつ理解できるようになっていく。つまりマーケット感覚が身についていきます。

最後に

すんごくおもしろい本でめちゃくちゃ参考になることばかりで耳折り・メモだらけになりました。

プログラミングやライティング、資格取得などスキルアップすることも良いのですが、マーケット感覚がないとせっかく努力してスキルを身につけたのにうまく発揮できなかったりずっと不安を抱えて仕事をすることになるかもしれない。そんなことに気づかせてくれる内容でした。

マーケット感覚は才能ではなく、学んで身につけられる能力です。自分がまだ見えてない、気づいていない価値はなにかをつねに考えて日々マーケット感覚を鍛えていきたいですね。


■編集後記
梅雨が来る前に冬物をすべて洗濯してなんとか夏物に切り替えられました。毎年ギリギリのような気がします。これで夏の準備はばっちりなんで、今年も暑さに負けずに乗り越えたいですね。